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【メディカル】高齢者の物忘れは脳のストレスホルモン受容体に関係あり!
老化脳
Posted on 2011.4.10
ストレスが脳に良くないことはよく知られています。特に高齢になるにつれ、ストレスの影響は大きくなり、激しいストレスが物忘れや一 時的記憶障害、さらには認知症の発症の引き金になることもあるといわれています。英国・エディンバラ大学のJoyce Yau博士らがThe Journal of Neuroscience 2011年3月16日号に発表した研究で、老化と共に物忘れが増加するプロセスに、高齢者の脳内にある糖質コルチコイドという ストレスホルモンに対して反応する2種類の受容体が関与していることが明らかになりました。
博士らはこれまでの研究で、11β-HSD1と いう酵素によって増幅された脳内の糖質コルチコイド(コルチゾル)が、加齢に伴う記憶欠損に大きな役割を果たしていることが知られており、11β- HSD1欠損マウスが加齢による空間記憶障害になりにくいことから研究を開始したということです。
博士らは、高齢の11β-HSD1欠損マ ウスと高齢の通常の実験用マウスを使用して、迷路と使用した実験を行いました。実験の結果、通常の高齢マウスでは増加した細胞内の糖質コルチコイドが、鉱 質コルチコイド受容体を飽和し、かつ糖質コルチコイド受容体を優勢に活性化して、その結果として記憶を損なっていました。
そしてこの障害 は、糖質コルチコイド受容体ブロッカーを与えることで改善しました。一方11β-HSD1欠損マウスでは、糖質コルチコイド受容体ブロッカーでは、なんの 影響もありませんでした。この結果から博士らは、ストレスホルモンの血中濃度を下げることで、記憶に悪い影響を与える脳内の受容体を活性化させないように できることがわかったので、将来的には老化に伴う記憶障害の予防と改善に、新たな11β-HSD1ブロッカーの開発が期待されるとしています。