コラムColumn
【メディカル】年齢を重ねると新しいことについていけなくなる脳神経的メカニズムが明らかに!
老化脳
Posted on 2011.6.4
米国・ニューヨーク市マンハッタンのマウント・サイナイ医科大学のJohn H. Morrison教授らがJournal of Neuroscience 2011年5月25日号に発表した研究で、年齢とともに老化が進むと新しい経験についていけなくなる、新しいことが覚え難くなる、などのことがどのようにして生じるのかを、脳神経科学的メカニズムから明らかにしました。
教授らは年齢とともに新しいことに柔軟性を失い、新規の学習能力が衰えてしまうのはどのようなメカニズムで生じているのかを明らかにする目的で、ラットを使った実験を行い、そのラットの脳神経を顕微鏡を使って観察しました。
教授らはこれまでの研究結果から脳の前頭前皮質の脳神経ニューロン樹状突起棘の再生を観察するのに適していることがわかっている行動ストレス実験を、若いラット、中年のラット、老年のラットのそれぞれに等しく行い、その際に顕微鏡を使用して脳神経細胞の微小な変化を観察しました。
観察の結果、若いラットの前頭前皮質にある脳神経細胞の樹状突起棘はストレスで一度失われても、ストレス状況が終わると、形態的に新たに次の状況に適応し、変容、再生しているのが観察されました。これは脳が経験に反応し新たな状況に適応したことを示していました。
一方、中年、特に老年ラットではこうしたことが生じておらず、前頭前皮質にある脳神経細胞の樹状突起棘はストレス前後で以前の状態のまま安定しており、変化が観察されませんでした。これは老化とともに人生上の新しい体験・新奇な経験に反応、適応するために大脳の前頭前皮質にある脳神経細胞を配線し直す能力が失われてしまうことを示していました。
教授らは前頭前皮質は、新しい経験に適応するために常に配線し直されており、一方、老化とともに脳神経細胞の樹状突起棘は減少するとともに、同時に残余の部分で変化に対応できなってしまう、この結果からは中年期以降できるだけ早く介入すことが脳の神経細胞を維持し認知能力の健康を保つために求められるとしています。