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【メディカル】脳画像で将来の認知機能の低下を予測できる!
老化脳
Posted on 2012.2.17
米国では65歳以上の高齢者の20%ほどが、軽度認知障害であり10%が認知症であると推定されているそうです。日本でも2010年 の「認知症の実態把握に向けた総合的研究」による全国6か所で行われた調査によると、65歳以上の認知症有病率が12.4%~19.6%(平均で 14.4%)であると報告されています。さてこうした認知症、特にアルツハイマー型認知症に対する医療のあり方として病態が進行する前、症状が出現する前 に診断し早期治療につなげようとする動きが高まっていますが、米国・UCLA・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のGary Small教授らは脳画像処理テクニックで、将来の認知機能低下を予測できることをArchives of Neurology 2012年2月号に発表しました。
教授らは43人の調査開始時点で認知症と診断されていなかった実験協力者(平均年齢 64歳)を対象に、2年間継続して新たな脳画像処理法を使用して脳の変化を調査分析しました。彼らの方法はアルツハイマー型認知症の特徴として出現する脳 のアミロイドベータタンパク質沈着と、老人斑に結合するFDDNPという彼らが開発した化学マーカーを使用して、PET(陽電子放出断層撮影)で脳画像を 造影するというものでした。
43人の実験協力者のうち22人は、年齢相応に健常な認知機能でしたが、21人にはアルツハイマー型認知症にな る可能性が高いとされる軽度認知障害が見られました。画像データと2年後の認知機能検査の関係を分析した結果、前頭葉と後帯状皮質などに、FDDNPマー カーが多く見られるほど、2年後の認知機能の低下が大きいことが、健常グループと軽度認知障害グループの双方で明らかになりました。
教授らはこのFDDNPマーカーを使用した画像診断は、アルツハイマー型認知症の症状が出現する前のリスクグループの早期発見を可能にし、早期の介入のための有用な手段となりうるとしています。