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【メディカル】加齢に伴う記憶障害を元に戻せる可能性が発見された!
老化
Posted on 2012.4.11
米国・スクリプス研究所(The Scripps Research Institute)フロリダ・キャンパスに所属する殿城亜矢子博士らが、Proceedings of the National Academy of Science 2012年4月2日オンライン版に発表した研究で、加齢に伴う記憶障害は回復することができないわけではなく、蘇らせ元に戻すことができる可能性があることが明らかになりました。
博士らは細胞機能イメージングの手法を用いて、ショウジョウバエの記憶経路の変化を詳しく分析しました。博士らによるとショウジョウバエも人間も、記憶機能の基本になる生化学的なシステムは同じであり、ショウジョウバエの加齢に伴う記憶障害を研究することで人間の記憶システムと加齢による記憶障害の生じるプロセスも理解することが可能だということです。
記憶のプロセスには短期記憶、中間的な保存期間の記憶、長期記憶があり、ショウジョウバエの場合、保持できる時間は、それぞれ30分、数時間、数日になります。今回の研究では嗅覚記憶のプロセスが研究され、高齢のショウジョウバエの場合は、中間的な保存期間の記憶のプロセスに障害が生じており、これが記憶障害の原因となっていることがわかりました。
詳しく分析した結果、このプロセスに関わるニューロンが特定でき、これが加齢に伴い機能不全となっていること、そしてこの特定のニューロンに刺激を与えたところ、機能不全となっていた中間的な保存期間の記憶が元に戻り、回復させることに成功しました。
この結果から博士らは、人間に関してもこの記憶障害を生じさせているニューロンが特定できれば、将来的にこのニューロンに的中して刺激する事ができる薬を開発し、結果として加齢に伴う記憶障害を回復させることが、生化学プロセスの原理からは可能だといえるとしています。