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鳥肌で髪を再生する幹細胞を調節できる?

美容老化

Posted on 2020.7.26

鳥肌を引き起こす細胞が、髪を再生させる幹細胞の調節に関与していることがハーバード大学と台湾大学の研究で明らかになり、2020年7月の『Cell』で報告されました。
鳥肌は厚い毛皮を持つ動物たちの毛を使って寒さから保護する働きがありますが、体毛のほとんどを失ってしまった人間はその反応からあまり恩恵を受けていない反面、鳥肌の機能がなぜ進化の間ずっと維持されているのはなぜでしょうか?
この答えにつながる研究成果として、 鳥肌を引き起こす細胞が毛包と髪を再生する幹細胞を調節するためにも重要であること、具体的には、交感神経は寒冷刺激(寒さ)に反応して、短期的には筋肉を収縮させて鳥肌を引き起こし、長期的には毛包幹細胞の活性化と新しい毛髪の成長を促進することがわかりました。
ハーバード大学の研究者が行ったマウスの実験によると、 寒冷刺激は交感神経ニューロンに神経信号を送り、これによって筋肉が反応して髪を収縮させて立ち上がらせます。さらに電子顕微鏡を用いて非常に高解像度で皮膚を調べると、交感神経が筋肉への刺激だけでなく、毛包幹細胞への直接的な刺激を与えていることを発見しました。実際、神経線維はリボンのように毛包幹細胞の周りを包んでいました。
さらに長時間の寒冷刺激によって、交感神経がはるかに高いレベルで活性化され、より多くの神経伝達物質が放出され、それによって幹細胞がすばやく活性化することで毛包が再生され、新しい毛が成長することも発見しました。 研究者らはまた、毛包幹細胞への神経伝達に関係するものを調べるために、毛包に接続された筋肉を取り除いてみると、交感神経が働かなくなり、毛包幹細胞への神経伝達が失われてしまうことが判明し、筋肉が交感神経を毛包に伝達するために必要であることを示しました。
【出典】
Yulia Shwartz, Meryem Gonzalez-Celeiro, Chih-Lung Chen, H. Amalia Pasolli, Shu-Hsien Sheu, Sabrina Mai-Yi Fan, Farnaz Shamsi, Steven Assaad, Edrick Tai-Yu Lin, Bing Zhang, Pai-Chi Tsai, Megan He, Yu-Hua Tseng, Sung-Jan Lin, Ya-Chieh Hsu. Cell Types Promoting Goosebumps Form a Niche to Regulate Hair Follicle Stem Cells. Cell, 2020; DOI: 10.1016/j.cell.2020.06.031