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【食】抑うつ行動はオメガ3不飽和脂肪酸の不足で説明がつく可能性あり!
食
Posted on 2011.2.3
フランス・Inserm・国立衛生医学研究所のOlivier Manzoni博士らがNature neuroscience 2011年1月30日オンライン版に発表した研究で、オメガ3不飽和脂肪酸の不足が、脳神経のシナプス機構と情動行動に、有害な結果をもたらすことが明らかになりました。
体内で合成できない必須脂肪酸のうち、オメガ6脂肪酸は現代文明社会においては摂取量が拡大傾向にあり、オメガ3脂肪酸は減少傾向にあり、二つの摂取比率のバランスは、どんどんオメガ6脂肪酸にシフトしているのが現代人の食生活であるといわれています。
これらの必須脂肪酸は、食事から摂取する以外になく、そのバランスが脳神経機能を最適に維持するのに不可欠であることを知られています。
博士らはこうしたことを背景に、脳神経が急速に発達する胎児期に慢性的に脂肪酸の栄養バランスが悪いと、成人して後の情動(抑うつや不安)を含むシナプス活動に、悪影響があるのではないかとの仮定のもとに、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸に関してマウスを使用した実験を行いました。
実験の結果、オメガ3脂肪酸が胎児期から常に慢性的に欠乏しているマウスでは、神経伝達に重要な機能を持つCB1Rカンナビノイド受容体のみが完全に機能を失い、そうしたマウスでは抑うつ行動が生じていました。さらにオメガ3欠乏マウスでは、CB1Rカンナビノイド受容体の機能喪失により報酬、動機と情動制御に関わるシナプス可塑性も妨げられていました。
博士らは、今後さらに研究する必要があるもののオメガ6脂肪酸の過剰摂取ととオメガ3脂肪酸の不足が気分障害に関与しており、オメガ3脂肪酸の不足による神経系のメカニズムが明らかになったことで、精神神経疾患の研究が進むことが期待できるとしています。