病原菌はふつう、高熱に弱いため、熱湯をかけて菌を殺す「煮沸消毒」が効果を発揮します。しかし、最近では、高温で洗剤も使う食器洗い機に、熱に強い病原菌が多数棲みついていることが明らかになりました。これはオランダ、スロベニア、中国などの研究者による共同研究の結果によるもので、英国の菌に関する科学雑誌『Fungal Biology』に掲載されました。研究では、食器洗い機に付着する菌がどんな種類であるかについて調べるために、世界101都市の189サンプルを採集しました。どの食器洗い機も60～80℃で食器を洗い、塩素系の洗剤を使用すており、病原菌が棲みつくにはかなり厳しい環境でした。しかしながら結果は、全体の56％を占める食器洗い機のゴムバンド部分に、病原性真菌エクソフィアラ属種が発見されました。エ クソフィアラ属真菌は、水まわりの湿度が高いところを好み、まれに健康な人であっても、致命的な感染症を引き起こすことがあります。今回発見された病原菌 には、酸性とアルカリ性に対する耐性や、熱に対する耐性も認められ、食器洗い機の中でも生きられるように、なっていることを、研究者らは指摘し、これらの 病原菌による、感染症に十分注意をする必要があると述べています。
P. Zalar, M. Novak, G.S. de Hoog, N. Gunde-Cimerman. Dishwashers – A man-made ecological niche accommodating human opportunistic fungal pathogens. Fungal Biology, 2011; 115 (10): 997