コラムColumn
【メディカル】医師としての人間性形成において、医学生に求められる要素とは?
その他
Posted on 2010.11.17
米 国・ニューヨーク・マウント・サイナイ・医科大学のDavid T. Stern教授らがAcademic Medicine 11月号に発表した研究によると、米国の医学生は彼らの医師としての人間性(Humanism)を発達形成させていくには、さまざまな 要因が必要だと考えていることがわかりました。
教授らは、医学生の人間性を発達させるのに最も影響を与える要因についての概念的な枠組みを 探求することを目的に、2006~2008年に全米20の大学医学部の4年生と研修医初年度の1170人を対象に調査をしました。調査票はまずミシガン大 学、スタンフォード大学など4つの大学の学生を対象に事前調査を行い、調査項目の妥当性などが検討評価された後に本調査の項目が決定され実施されました。
調 査の結果、学生たちが医師としての人間性の形成に影響を与えるとしたものは、①実習中に出会う患者の死などの大変強烈なインパクトのある経験、②海外での 医療ボランティアなどの参加・体験学習の経験、③積極的に見習うべきモデルとなる先輩医師との出会いなどを挙げ、忙しすぎ、疲労、当直明けなどストレスフ ルな職場環境は彼らの人間性の発達を阻害する要因として挙げていました。
また女性とプライマリケアに参加した学部生は、プライマリケア(総 合医・家庭医)の経験を人間性を発達させるために重要なもの考えているのに対し、男性や未経験者はさほど重視していませんでした。また医学部で勉強するた めに多くの借金を抱えている学生よりも、学費の借金がない学生のほうが、プライマリケアの経験をより重要なものと考えていることもわかったということで す。
こうした結果について教授は、この調査は医学生の人間性を発達させるカリキュラムづくりのための出発点であり、今後さらに研究を進める必要があるとしています。