香りが自律神経に影響を与えることはよく知られています。たとえばアロマなどのいい香りが副交感神経を刺激してリラックスすることはよく知られていますが、反対に、悪臭の影響でも、血圧がわずかに上昇してしまう可能性があることがわかりました。

こ れは養豚工場などから発生する卵が腐ったような硫化水素を含む悪臭は、近隣住民の血圧を上げてしまうという、米国ノースカロライナ大学のSteve Wing 博士らが、2012年11月1日のオンライン版Environmental Health Perspectiveに発表した研究によって明らかになりました。

この研究はノースカロライナの東部海岸地域の養豚場の近くに住む101 人の非喫煙者を対象に行ったもので、被験者の約半数が53歳以上で、84％が黒人系だと回答しています。被験者には1日2回、屋外に10分間出て座っても らい、豚の臭いの強烈さ、ストレスレベル、その他の項目について2週間ほど日誌に記入してもらいました。

その結果、収縮期血圧は平均0.29mmHg、拡張期血圧は平均0.12mmHgほど高くなっていたことが明らかになり、豚の悪臭が最もひどい場所では収縮期血圧が3.0mmHg、拡張期血圧が2.0mmHgも上がっていることが推定されました。

こ の結果について研究者らは、環境の中には養豚場以外にも、下水やごみ処理場、化学工場などから放出される悪臭があり、知らないうちにその影響で少しずつ健 康を害してしまう危険もあるため、それらの悪臭をコントロールすることで、人間の健康に少しでも貢献できる可能性が考えられると述べています。