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同じ遺伝子が友人関係のストレスを緩和し経済的なストレスを悪化させる

その他

Posted on 2018.10.9

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セロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)は、
メンタルヘルス、特にストレス耐性やうつ病との関連性が指摘されています。
これはセロトニンの代謝に関係する遺伝子で、この遺伝子が短い型(SS型)の人は、
長い型(LL型)の人に比べて、ストレス耐性が低く、うつ病になりにくい
という研究結果が多数報告されています。
抗うつ薬の「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」は、
5HTTLPRの働きを阻害して、セロトニンの濃度を上昇させることで
うつ病の改善を狙って開発されました。
実はセロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)が、
若い世代には友人関係や社交面でのストレスに由来するうつ病を
予防する一方で、高齢になると5HTTLPRが経済的なストレスが
関係するうつ病の発症リスクを高めていることが明らかになり、
2018年10月にバルセロナで開催された「欧州神経精神薬理学会(ECNP)」で発表されました。
同じ遺伝子でありながら、人生のさまざまな悩みごとや年齢の違いで、
私たちの精神面に全く逆の影響を与えていることが興味深いですね。
European College of Neuropsychopharmacology, October 2018