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警告はストレスを軽減しない

その他心理

Posted on 2023.10.31

トリガー警告(trigger warning)は、映像の一部に気分や感情を害する可能性がある場合に、事前にその旨を注意喚起・警告しておくことで、最近ではSNSなどでも頻繁に用いられており、逆にトリガー警告がないと訴訟沙汰になりかねないこともあるので、一般的になっています。

オーストラリアのフリンダース大学の研究によると、このようなトリガー警告は苦痛を軽減するどころか、かえって苦痛を増大させることが、新たな研究分析で明らかになり、2023年8月の「Clinical Psychological Science」で研究成果が紹介されました。

この研究では、参加者の否定的な感情反応、回避行動、理解力に対するコンテンツ警告の影響に関する 12 件の研究結果を比較しました。その結果、 5つの研究で、コンテンツ警告を読んだ参加者は、読まなかった参加者よりも、読む前に大きな不安を抱きました。つまり警告は予期不安を増大させます。さらに 9つの研究で、コンテンツの警告は、デリケートなコンテンツを閲覧した後の参加者の苦痛、恐怖、不安の感情に何の影響も与えませんでした。また 5 つの研究全体で、参加者はトリガー警告を受けたかどうかに関係なく、問題となるコンテンツをほぼ同じ割合で視聴しました。つまりトリガー警告は回避力を増大しないことがわかりました。
また3 つの研究で、コンテンツのトリガー警告は参加者の文書内容の理解力に影響を与えませんでした。

つまり、多くの人々が問題となるコンテンツを避けるためにトリガー警告を活用していないことが今回の研究成果で明らかになっています。

【出典】 Victoria M. E. Bridgland, Payton J. Jones, Benjamin W. Bellet. A Meta-Analysis of the Efficacy of Trigger Warnings, Content Warnings, and Content Notes. Clinical Psychological Science, 2023; DOI: 10.1177/21677026231186625