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高脂肪食は腸と脳の遺伝子に悪影響
その他食
Posted on 2024.6.7
高脂肪食は、肥満、結腸がん、過敏性腸だけでなく、免疫系、脳機能、そして潜在的には新型コロナウイルス感染症のリスクにも関連する遺伝子に影響を与えることが米国カリフォルニア大学リバーサイド校の研究で明らかになり、2023年12月の「Scientific Reports」に掲載されました。
この研究では、 脂肪酸組成のみが異なる 3 つの高脂肪食(総カロリーの40%を脂肪が占める)をマウスに24週間にわたり与えました。具体的には①ココナッツ油 (飽和脂肪)、②大豆油 (多価不飽和脂肪)、③遺伝子組み換え大豆油 (一価不飽和脂肪)、④低脂肪食、という4つの食事の影響による腸の遺伝子発現の変化を調べました。 さらに機能的に異なるマウスの腸管のうち、 4 つのセグメント (十二指腸、空腸、回腸終末、および近位結腸) の異なる脂肪の高脂肪食を摂取した前後の遺伝子解析も行いました。
研究の結果、ココナッツ油が最も多くの遺伝子発現への影響を示しており、続いて大豆油、遺伝子組み換え大豆油の順で、これにはリノール酸の量が関係しているのではないかと研究者は推察しています。
具体的にどんな遺伝子発現に影響を与えたかというと、感染性細菌を認識する免疫システムと炎症を抑制する免疫システムの不活化、病原性大腸菌の増加、病原体から体を守る腸内細菌の減少、 新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が体内に侵入するために使用される ACE2 およびその他の宿主タンパク質の発現を増加、 いくつかの神経伝達物質遺伝子の発現に対するマイナスの影響などが確認されました。
これらの結果について研究者は、すでに先行研究で2015年には大豆油がマウスの肥満、糖尿病、インスリン抵抗性、脂肪肝を誘発することを発見し、2020年には、高脂肪食が自閉症、アルツハイマー病、不安、うつ病などの症状に関連する脳内の遺伝子にも影響を与える可能性があることを実証しているために、結果は予測できたが、予測を超える悪影響が高脂肪食によって引き起こされることが明らかになったと述べています。さらに、アメリカ人は食事の40%を脂肪から摂取しているが、 滝切な脂肪の量は、食事の10~15%程度で、脂肪の摂り過ぎを運動で帳消しにするのは難しく、新年の新たな決意として、脂肪を摂りすぎない食事を心がけるチャンスにして欲しいと述べています。また、大豆油やココナッツ油が悪者ではなく、問題は取り過ぎないこと、量を減らすことで、豆腐などの大豆製品は総カロリーを抑える良質な食品なので、誤解をしないようにと注意しています。
【出典】 Jose Martinez-Lomeli, Poonamjot Deol, Jonathan R. Deans, Tao Jiang, Paul Ruegger, James Borneman, Frances M. Sladek. Impact of various high fat diets on gene expression and the microbiome across the mouse intestines. Scientific Reports, 2023; 13 (1) DOI: 10.1038/s41598-023-49555-7