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CAR-T細胞が老化を抑制

その他老化肥満脳

Posted on 2024.7.15

老化を止めたり遅らせたりすることは、人類共通の夢で、世界中で不老不死の研究が昔から行われてきました。新しい研究によると老化の抑制には、あるT細胞を再プログラミングする方法が有効であることが、米国コールドスプリングスハーバー研究所のマウスを用いた研究で明らかになり、2024年1月の「Nature Aging」に研究成果が発表されました。

この研究で注目されたのは、 「CAR-T細胞」というもので、これまで通常の免疫細胞だけでは撃退できない難治性のがんに対する治療法として開発されたT細胞の一種です。具体的には、がん細胞の表面にある特別な抗原を認識して攻撃する「CAR (chimeric antigen receptor:キメラ抗原受容体) 」というたんぱく質を作り出すように設計されたT細胞です。「CAR-T細胞」は、これまで難治性のがんの治療薬として用いられていましたが、今回の研究によると、高齢のマウスに投与すると若返り、若いマウスに投与すると老化が遅くなることが確認されました。

研究者はこの現象について、「CAR-T細胞」が、年齢を蓄積するにつれて体内に蓄積して、有害な炎症を起こす老化細胞の複製を停止する力があり、これによって老化の抑制や若返りに貢献する可能性があると分析しています。

【出典】 Corina Amor, Inés Fernández-Maestre, Saria Chowdhury, Yu-Jui Ho, Sandeep Nadella, Courtenay Graham, Sebastian E. Carrasco, Emmanuella Nnuji-John, Judith Feucht, Clemens Hinterleitner, Valentin J. A. Barthet, Jacob A. Boyer, Riccardo Mezzadra, Matthew G. Wereski, David A. Tuveson, Ross L. Levine, Lee W. Jones, Michel Sadelain, Scott W. Lowe. Prophylactic and long-lasting efficacy of senolytic CAR T cells against age-related metabolic dysfunction. Nature Aging, 2024; DOI: 10.1038/s43587-023-00560-5