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がん細胞を正常な細胞に戻すことに成功
その他病気老化
Posted on 2024.12.5
米国テネシー州 セントジュード小児研究病院の研究で、進行性のがんを逆転させて正常な細胞に戻すことに成功したことが明らかになり、2024年3月の「Nature」で発表されました。
セントジュード小児研究病院の研究で用いられたのは、乳幼児にまれに見られる「ラブドイド悪性腫瘍」で、重要な腫瘍抑制タンパク質が欠損していることによって脳や腎臓などを中心に全身に発生するがん細胞です。
今回の研究結果によると、腫瘍抑制因子が欠損している場合、細胞の品質管理をする働きを持つタンパク質「DCAF5」を欠失または分解させることでがん細胞の状態が逆転し、正常な細胞に戻る「非がん細胞状態」になることが判明しました。
現在のがん治療の主流は、がん細胞を手術や化学療法、放射線療法で除去したり、死滅させたりするのが現在のがん治療の主流で、これらの治療によって正常な細胞までもがダメージを受けてしまうことがデメリットでした。
今回の研究結果は、がん細胞を除去・死滅することなく、正常な細胞に戻すという方法で、がん治療の新しいアプローチとして注目されています。
【出典】 Sandi Radko-Juettner, Hong Yue, Jacquelyn A. Myers, Raymond D. Carter, Alexis N. Robertson, Priya Mittal, Zhexin Zhu, Baranda S. Hansen, Katherine A. Donovan, Moritz Hunkeler, Wojciech Rosikiewicz, Zhiping Wu, Meghan G. McReynolds, Shourya S. Roy Burman, Anna M. Schmoker, Nada Mageed, Scott A. Brown, Robert J. Mobley, Janet F. Partridge, Elizabeth A. Stewart, Shondra M. Pruett-Miller, Behnam Nabet, Junmin Peng, Nathanael S. Gray, Eric S. Fischer, Charles W. M. Roberts. Targeting DCAF5 suppresses SMARCB1-mutant cancer by stabilizing SWI/SNF. Nature, 2024; DOI: 10.1038/s41586-024-07250-1