コラムColumn
【食】体重は生まれる前に決定されている!同じ食生活でも太る人は太り、痩せる人は痩せる。
肥満脳
Posted on 2010.8.8
痩せの大食いという人もいれば、水を飲んでも太る体質などと、自虐的に語る人もいるように同様な食生活をしているのに一方は痩せたままで、一方は太ってしまうということがあります。いつの間にか太ってしまうタイプで周囲からセルフコントロールが出来ない人間のように疑われて傷ついている方もいるかも知れません。
米国・イェール大学医学部・比較医学・神経生物学・産科婦人科学Tamas Horvathの教授らがProceedings of the National Academy of Sciences(PANAS)8月2日オンライン版に発表した研究で、将来の体重は出生前の脳内で決定されている可能性があることがわかりました。教授らは生まれつき太りやすい体質のラットと、太りにくい体質のラットの摂食と脳内の神経回路の働きを分析しました。
その結果、太りやすいラットと太りにくいラットでは脳の摂食中枢の働きに違いがありました。太ってしまうラットの脳内では満腹時や空腹時に、シグナルを出すニューロンが、他の細胞の働きで抑制され、非常に緩慢な作用しかしていませんでした。一方、太りにくいラットでは、十分なだけのエサを摂食すると、脳の他の部分や体の末梢部分に対して満腹信号を出すニューロンの働きが、より活発かつ俊敏に機能していました。さらに肥満したラットの脳では炎症反応も生じており、これが一度肥満になってしまうと、減量により困難をきたす原因となっている可能性もあると指摘しています。
教授はこの結果から、肥満は個人の意志の問題というよりも、発達過程で脳に生じる問題として取り扱うべきであり、遺伝的素質と共に太りやすくなってしまう脳内神経回路の形成には、脳の発達に与える母体の影響が重要な意味を持つ可能性があるとしています。