コラムColumn

【食】肥満者は脳内のグルコース(ブトウ糖)レベルが上昇しても高カロリー食への欲求が抑制されない!

肥満脳

Posted on 2011.11.25

taberu肥満の増加は、先進国だけではなく世界中で問題となりつつありますが、現代の消費文明が、ファストフードなど、高カロリー食がいつでもどこでも手に入り、そうした高カロリー食への欲望を刺激する情報・イメージが、さまざまなメディアに溢れていることも、肥満の増加の原因の一つだと考えられています。
米国・イェール大学のRajita Sinha教授らがJournal of Clinical Investigation 2011年9月19日オンライン版に発表した研究で肥満者は脳内グルコースレベルが上昇してもの高カロリー食への欲求が脳神経メカニズム的に抑制されないことが明らかになりました。
教授らは高カロリー食への欲求と、欲求のコントロールに関して、脳内のグルコースレベルの上下による脳神経系における変化が、肥満者とそうではない人に違いがあるのではないかと考え、肥満者と普通体重の被験者を対象に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使用した実験を行い分析しました。
実験は被験者の血糖値を操作しつつ、被験者に高カロリー食品、低カロリー食品、食べ物以外の物、それぞれの写真を見せて、その際の脳内の変化をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って分析するというものでした。データを分析した結果、グルコースレベルが低下した場合には、食べ物の写真に刺激され、脳の線条体という食欲を喚起する部分から、食べろという緊急信号がどんどん発せられて、また大脳の前頭前野にあるそうした欲求の増大を抑制する能力も失われていました。
逆にグルコースレベルが上昇していたり正常値にある場合は、普通体重の人々では前頭前野の抑制能力が元に戻っていました。
しかし肥満者では、血糖値が戻っても、脳の機能は元に戻っておらず、抑制が失われたままで、特にハイカロリー食品の写真が提示されたときに、この反応が顕著に現れたということです。
この結果から教授らは、肥満者は食衝動を抑制する能力が、普通体重者に比べて極めて限定的にしか働かなくなっており、特にグルコースレベルが正常値よりも低下した際に、抑制能力の低下が著しいことがわかったので、肥満者に過食させない戦略として、グルコースレベル(血糖値)の低下を上手くコントロールすることと、高カロリー食が目に入りにくい環境づくりが重要となるのではないかとしています。