コラムColumn
エストロゲンの減少と中高年女性のメタボ
女性病気老化
Posted on 2009.5.22
それまでにはない体の変化を感じるもの。
これには,女性ホルモンのエストロゲンが減少することが関係しています。
エストロゲンは女性らしいふっくらと丸みをおびた胸や
ヒップをつくるために適度に皮下脂肪を蓄えてくれるホルモン。
閉経が近づくとエストロゲンの分泌が減り、その影響で、女性も男性のように、
皮下脂肪よりも内臓脂肪がつきやすくなります。
加齢にともなう脂肪の割合の変化は、女性の場合、
55歳を境に皮下脂肪が減って内臓脂肪が増え、
45歳のときに体全体の46%だった内臓脂肪が、
65歳になると60%にまで増加するという調査データがあります。
中高年女性は、エストロゲンの分泌が減少する閉経を迎えるタイミングで、皮下脂肪よりも、内臓脂肪が増加しやすくなることを知り、それまでの食事や運動などの生活習慣を見直すことが、
メタボリックシンドロームや肥満を予防するために重要です。
また、筋肉量も40歳頃から毎年約0.5%ずつ減少し、これが基礎代謝量を減らして、
ますますやせにくい体にしてしまうのです。
やせやすい体にするには基礎代謝量を高めることが必要で、
そのためには筋肉量を増やして、エネルギーを燃焼しやすい体にする必要があります。
ムキムキになりたくないと筋肉質な体をきらう女性も多いですが、
筋肉は食物から吸収した糖をエネルギーに換えて消費し、
余分な脂肪を蓄積させないようにするほか、
血行促進や体温維持にも欠かせない重要な存在です。
実際にBMI(体格指数)が高く肥満の人ほど
糖をエネルギーに換える力が弱いことがわかっています。
さらに肥満の人とやせ型の人の体質に大きな違いを作り出すのが、脂肪細胞。
脂肪細胞は余分なエネルギーを蓄えるだけでなく、
アディポネクチンやレプチンといった善玉のホルモンをつくる機能を担っています。
しかし脂肪細胞の種類によって、働きは大きく異なります。
メタボ検診で注目されている内臓脂肪は、
脂肪細胞のひとつひとつが異常に大きくなりすぎたもの。
アディポネクチンやレプチンのような善玉ホルモンの分泌が減少し、体に悪いダメージを与える悪玉物質の分泌が増えて、血管や細胞を傷つけます。
お腹のまわりにつく内臓脂肪は、その名のとおり、
臓器の間の腸間膜に付着します。
内蔵の近くに貯蔵されているため、
肥大化した内臓脂肪に蓄えられた中性脂肪は、
肝臓にすばやく取り込まれて、エネルギーとして消費されずに肝臓に溜まり、
肝臓を“フォアグラ状態の脂肪肝”にしてしまいます。
一方で皮下脂肪が蓄えた脂肪は、血管を通じてゆっくり時間をかけて
全身の筋肉に運ばれてエネルギーとして消費されるので、
肝臓や筋肉に脂肪を溜め込む性質はありません。
内臓脂肪がメタボリックシンドローム、つまり代謝異常を起こす
悪玉の脂肪細胞といわれているのはこれが原因です。
前述したとおり、肥大化した脂肪細胞では、
アディポネクチンとそれをうまく働かせるための受容体が
どちらもうまく作れなくなり、脂肪細胞内で炎症が起こります。
この炎症によって、悪玉の分泌物(悪玉アディポサイトカイン)がつくられて血液中に流れ出し、
血管や細胞を傷つけたり、インスリンの働きを悪くすることで、
糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や動脈硬化を悪化させるリスクを高めます。