コラムColumn
乳がんを引き起こす腸内細菌
女性病気
Posted on 2021.1.21
ある種の腸内細菌が、乳がんを引き起こす可能性があることが、米国ジョンズホプキンス医科大学の研究で明らかになり、2021年1月の『Cancer Discovery』に研究論文が掲載されました。
過去の別の研究で腸内細菌の「ETBF菌」が、結腸の炎症を誘発してがんの発生を引き起こすことが報告されていました。ジョンズホプキンス医科大学の研究者らは、マウスにETBF菌を与えたところ、ETBF菌は腸にコロニーを形成し、さらに3週間以内にマウスの乳腺組織から前がん状態である乳管の過形成を発見しました。さらに追加的な実験としてマウスの乳頭に直接ETBF菌を注入したところ、2~3週間以内に前がん状態の乳房組織が形成されているのを確認しました。ETBF菌に72時間暴露された乳房組織は、ETBF菌の毒素の記憶を保持し、がんの発生を開始することも明らかになりました。研究者はこの結果について、腸内細菌を正常に保つことが乳がん予防にもつながることが考えられるだけでなく、乳がんの早期発見のために腸内細菌叢を調べるための検便も将来的に有効になる可能性があると述べています。
【出典】
Sheetal Parida, Shaoguang Wu, Sumit Siddharth, Guannan Wang, Nethaji Muniraj, Arumugam Nagalingam, Christina Hum, Panagiotis Mistriotis, Haiping Hao, C. Conover Talbot, Konstantinos Konstantopoulos, Kathleen L. Gabrielson, Cynthia L. Sears, Dipali Sharma. A pro-carcinogenic colon microbe promotes breast tumorigenesis and metastatic progression and concomitantly activates Notch and βcatenin axes. Cancer Discovery, 2021; CD-20-0537 DOI: 10.1158/2159-8290.CD-20-0537