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【メディカル】体内の鉛が変形性膝関節症と関係している
病気
Posted on 2011.3.20
米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAmanda E. Nelson博士らがArthritis Research & Therapy 2011年3月1日オンライン版に発表した研究で、鉛の血中濃度が変形性膝関節症のリスク要因である可能性が明らかになりました。
博士らはこれまでの研究で、鉛などの金属が周囲の環境中に多いエリアや、建物に生活する人々に変形性関節炎が多い可能性を示唆するものがあったことから、今回の調査を企画しました。20世紀の後半においては建築物や農薬などに鉛が多用されていましたが、現在ではその毒性が指摘され、ほとんど使用されておらず、周辺環境中の鉛の濃度ではなく、鉛の影響を直接調べるために血中の鉛の濃度を調査し、関節炎との関係が分析されました。
調査はノースカロライナ州の住民1669人(平均年齢65歳、平均BMI値31、男性33%女性67%、白人65%黒人35%)を対象に、調査対象者に対する膝の関節のレントゲン写真撮影、変形性膝関節症の有無と症状の重さの聞き取り調査、鉛の血中濃度が採取されデータ分析されました。
その結果、平均鉛血中濃度は1.8 μg/dLであり性、人種、BMI値の要因を除いた上で血中の鉛濃度が高いと、レントゲン写真で明らかな変形だけでなく、症状としての変形性膝関節症である可能性が高いことがわかりました。
血中の鉛濃度を高低で4段階に分けた場合、最も低濃度の25%の人たちに比べ、最も高濃度の25%の人たちはレントゲン写真で形態的に重い変形であるオッズ比が1.34、症状として両側性変形性膝関節症であるオッズ比が1.46にも上っていました。
博士らは鉛の血中濃度が変形性膝関節症の潜在的リスク要因である可能性は、この結果から非常に高いといえるのではないかとしています。