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歯科のX線検査が脳腫瘍リスクを増加させている可能性!~米国の研究

病気脳

Posted on 2012.5.4

 


米国における全ての原発性脳腫瘍のうち、33%は髄膜腫で、ほとんどが良性 のものであり、最も一般的な原発性脳腫瘍であるとされていますが、イェール大学のElizabeth Claus博士らがCancer 2012年4月10日オンライン版に発表した研究で、歯科クリニックでのX線被曝の頻度と、髄膜腫の発症に相関性があ り、頻度が多い人ほど発症リスクが高くなっていることが明らかになりました。

博士らは2006年から2011年にかけて、米国内の複数の地 域で頭蓋内髄膜腫と診断された合計1433人(20歳から79歳)の患者を対象に、歯科でのX線検査履歴との関係を調査しました。今回の研究では比較対照 グループとして、合計1350人が各地域で性別、年齢などを一致させて選抜され、患者と比較されました。

データを分析した結 果、髄膜腫の患者は、対象グループに比べて、約2倍の頻度で咬翼法と呼ばれる歯科X線検査を受けていることがわかりました。そして毎年1回以上、咬翼法X 線検査を受けていると、髄膜腫発症リスクが10歳以下で1.4倍、10~19歳で1.6倍、20~49歳で1.9倍、40歳以上の合計で1.5倍も上昇し ていました。さらにパノレックス(回転断層撮影法)で検査を受けていた場合、10歳以下の場合は4.9倍も髄膜腫リスクが高く、このパノレックス法を年1 回以上受けた場合、全体では約3倍リスクが上昇することもわかりました。

博士らは技術の進歩により、以前に比べて歯科でのX線の放射線量が少なくなっているので、単純に今回の結果から、今後も同様のリスクの増加があるとは考えられないが、X線被曝をもたらす検査については、患者の利益になるように十分に配慮されなければならないとしています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子

Cancer 2012年4月10日オンライン版