コラムColumn
微小粒子状物質(PM)と肺がんの因果関係~ヨーロッパのデータ
病気
Posted on 2013.8.24
皆さん、微小粒子PM2.5やSPM10による大気汚染、忘れていませんか? ときどき「そらまめ君」 (環境省大気汚染物質広域監視システム)で自分の居住エリアの大気汚染の状況をチェックしてください。
ヨーロッパの研究によると、大気中に浮遊している微小粒子(日本で言うところのPM2.5やSPM10などの髪の毛の30分の1ほどの微小な粒子)が、肺がん、特に近年、タバコを吸わない女性に増えている「腺がん」のリスクを高めていることが明らかになり、ヨーロッパにおける微小粒子による大気汚染と肺がんの因果関係が指摘され、2013年8月のThe Lancet Oncologyで報告されました。
この研究はデンマークがん研究センターの研究者らが「ヨーロッパにおける大気汚染の影響に関するコホート研究(ESCAPE)」の中の17の研究結果がベースで、12.8年間にわたり約400万人のヨーロッパの各国に居住する人を対象に調査を行った結果をもとに分析しました。
調査期間の12.8年間に、2095人が肺がんと診断され、10マイクロメートル未満の微小粒子が10マイクロ立方メートル増えると、肺がんのリスクが1.22倍に高まり、2.5マイクロメートル未満の微小粒子(PM2.5)が5マイクロ立方メートル増えると、肺がんのリスクが1.18倍増えることが明らかになりました。
注目したいのは、肺がんの中でも女性の発症が近年増えている「腺がん」とのリスクがPM10で1.51倍、PM2.5で1.55倍と因果関係があることが指摘されました。
研究者らは、窒素酸化物や交通量との関係も分析しましたが、因果関係は薄く、PMの浮遊が多いエリアに引っ越しをせずに長期間住んでいることが関係しているのではないかと指摘しています。
The Lancet Oncology, Vol. 14 No. 9 pp 813-822 (Aug. 2013).
PM2.5は、マスクをかけるぐらいでは避けられない厄介な物質。世界規模で環境改善に取り組まなければいけない問題。国際政治と深く絡む複雑な側面がありますが、私たちの大切な肺をむしばんでいる可能性があることを忘れずにいましょう。日本でもPM2.5の疫学研究、進めて欲しいですが、研究費が縮小されているようです。