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トキソプラズマ感染でネズミがネコを恐れなくなる理由

病気

Posted on 2013.9.22

トキソプラズマ症は、ネコに多くみられる「トキソプラズマ」という寄生虫による感染症で、健康な成人が感染しても無症候ですが、免疫が低下している人乳幼児、、特に妊婦が感染すると、生まれてきた赤ちゃんに、脳炎、神経疾患、肺、心臓、肝臓、眼球の病気などのリスクが高まります。
このトキソプラズマは、なぜネコに特有の寄生虫なのか?これについては、以前から、ネコのエサであるネズミが感染を起こすと、ネコを恐れなくなり、ネコがネズミを捕まえやすくなるからだと言われています。
カリフォルニア大学バークレー校の研究者らによると、ネズミがトキソプラズマに感染すると、長期間にわたり、ニオイを感知する脳の部位が損傷されて、記憶や学習に関係する神経細胞の性質を変えてしまっている可能性があり、それがネコを怖がらなくなるという異常な行動に関係しているのではないかと推察し、2013年9月18日付の科学雑誌『PLOS ONE』に発表しました。
トキソプラズマは、ネコのお腹の中に生息し、ネコの尿や糞がついたものに触れることで次々に感染を起こします。豚、牛などにも感染するため、汚染された食肉で人が感染することも少なくありません。
今回の研究では、トキソプラズマが脳神経に長期間にわたってダメージを与えてしまうことがわかりました。恐ろしい寄生虫の感染を防ぐためにも、乳幼児や高齢者、妊婦の皆さんは特に、ネコの糞や尿に汚染された土などを触れないようにして、肉はトキソプラズマが死滅する65℃以上に加熱してから食べるようにしてください。
またネコは室内で飼い、生肉などを与えないで、衛生的なキャットフードで飼育し、トイレのお掃除をするときはしっかりとゴムの手袋をはめて行い、終ったらしっかり消毒しましょう。
Wendy Marie Ingram, Leeanne M. Goodrich, Ellen A. Robey, Michael B. Eisen. Mice Infected with Low-Virulence Strains of Toxoplasma gondii Lose Their Innate Aversion to Cat Urine, Even after Extensive Parasite Clearance. PLoS ONE, 2013; 8 (9): e75246