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弱い夜の光でも睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が低下
病気脳
Posted on 2019.12.22
ドイツのライプニッツ淡水生態内陸水産研究所の研究によると、弱い光でも、人間をはじめとする脊椎動物の体内で分泌される睡眠ホルモンのひとつである「メラトニン」の分泌を抑制してしまうことが明らかになり、2019年11月の『Sustainability』に掲載されました。
メラトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれ、脳の松果体において生合成されるホルモン。網膜から入った外の光刺激が、体内時計(生物時計・視交叉上核)を経て松果体に達すると分泌されます。明るい光の刺激によって分泌が抑制されるメラトニンは、日中に分泌が低く、夜間に分泌量が十数倍に増加して、睡眠をコントロールしています。しかし、窓のない暗室などでも、体内時計からの神経伝達によって昼高夜低の日内変動は続き、逆にコンビニの店内や1000ルクス以上の明るい照明などを浴びれば、夜間でもメラトニン分泌量は低下します。
今回の研究結果は、魚、両生類、爬虫類、鳥類、および人間を含む哺乳類の典型的な光汚染条件下でのメラトニンに関する研究を特定した1900件の文献レビューの結果によるもの。その結果、魚やげっ歯類では0.01〜0.03 lx(ルクス)程度の光でメラトニンの分泌抑制が起こり、光に敏感な人間の場合、6 lx(ルクス)程度でメラトニンの分泌抑制がみられたということです。比較として星空の照度は0.001ルクス、満月の夜は最大0.3ルクス、都市の空光は最大0.1ルクス、屋外照明は150ルクス程度です。
低レベルの光刺激でも、睡眠を導入・維持するためのホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されてしまうことで、睡眠の質の低下が引き起こすさまざまな疾患を引き起こす可能性があるので、注意しましょう。