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検便で動脈硬化チェック~腸内細菌が心血管疾患検査に役立つ可能性

病気老化

Posted on 2020.9.11

世界の死因のトップである心血管疾患(Cardiovascular Diseases:CVD)のスクリーニング検査に、検便による腸内細菌叢検査が役立つ可能性があることが米国オハイオ州トレド大学の研究でわかり、2020年9月10日付発行のアメリカ心臓協会(AHA)医学専門ジャーナル『Hypertension』に掲載されました。

CVDは、動脈硬化が進み血管の伸縮性が失われ、血管の内側にも汚れが付着して、血液の通り道が狭くなることで、全身の臓器への酸素・栄養の供給が不足することで起こる疾患です。主なものとして心臓の近くの冠動脈が狭くなり心筋が壊死することで発生する心筋梗塞、脳の血管が閉塞してその先の脳細胞が壊死することで起こる脳梗塞、脚の太い動脈が狭くなることで引き起こされる下肢の潰瘍や筋委縮などの末梢動脈疾患などがあります。一見すると何の関係もなさそうな腸内細菌叢とCVDですが、この研究では、約1000人の便サンプルを用いてデータを分析。このうち約半数のCVD患者の便には、 バクテロイデス、サブドリグラニュラム、クロストリジウム、メガスファエラ、ユーバクテリウム、ヴェイロネラ、アシダミノコッカス、リステリアなどが多いことが明らかになりました。この結果について研究者は、 「腸内微生物叢は非常に多様で個人差があるにもかかわらず、CVDを有する患者からは特定の微生物が多く発見されることがわかり、CVDの便利な診断スクリーニング法として有望なレベルの制度を有することが明らかになった」と述べています。

【出典】Sachin Aryal, Ahmad Alimadadi, Ishan Manandhar, Bina Joe, Xi Cheng. Machine Learning Strategy for Gut Microbiome-Based Diagnostic Screening of Cardiovascular Disease. Hypertension, 2020; DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.120.15885