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【メディカル】転倒を恐れる高齢者は本当に転倒してしまう!

心理老化

Posted on 2010.8.29

tento高 齢者で実際の自分の運動・神経機能が衰えて転ぶ可能性が少ないにもかかわらず、転んでしまうのではないかと必要以上に心配している人は本当に転んでしまう ことがオーストラリア・シドニーUniversity of New South WalesのStephen R Lord教授らが8月19日のBritish Medical Journalに発表した研究で明らかになりました。
教授らはシドニー市に 在住する500人の70歳から90歳までの高齢者を対象に、医学的・神経心理学的な広範な検査・調査を実施しました。そして実際の転倒の危険性と、調査対 象者自身が感じている転倒することへの心配・恐れも、一年間にわたり毎月調査されました。その結果、運動神経機能の衰えによる実際の転倒リスクと、本人が 受け取っている心理的な転倒リスクへの恐れが、独立に別々の因子として転倒リスクに影響していることがわかりました。
まず教授たちはデータに基づ き、①肉体的にも心理的のも元気で転倒リスクが少ないグループ(29%)②肉体的にも心理的にも衰えていて転倒リスクがほんとうに高いグループ (40%)③肉体的に衰えていたリスクが高いのに平気でいるグループ(リスク過小評価20%)④肉体的に心配ないのに心理的に転倒を恐れているグループ (リスク過大評価11%)の4つに分けました。
実際と自己認識に乖離のある③と④を比較すると、③のグループはある意味楽天的、大胆な性格 で実際の機能低下を積極性が補いそのことが機能低下を防ぎ転倒リスクを低下させていました。しかし④の過大評価グループは、心理的な抑鬱や神経症的な性格 の人たちで転倒恐怖が行動範囲を狭めて、運動機能の低下を招き実際の転倒リスクを高めていました。
この結果から教授らは、高齢者の転倒恐怖を取り除くことで高齢者を大胆にさせても転倒リスクを増大させることにはならないとは言えるとしています。