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【ライフスタイル】ストレスがあると人は長所だけを重視した判断になりがち!
心理脳
Posted on 2012.3.2
米国・南カリフォルニア大学のMara Mather博士らがCurrent Directions in Psychological Science 2012年2月号に発表した研究で、人はストレスにさらされていると、リスクと報酬の比較衡量が変化してしまい、美点や長所にばかりが目に入り、欠点を無視しがちとなって、意思決定や判断が平静の時とは変わってしまうことが、明らかになりました。
博士らはこれまでの研究で、ストレスが認知に影響を与えていること、さらには脳の海馬に影響して、記憶力にも関与していることなどは、明らかにされてきましたが、高度な判断を行う中枢である前頭前野など、ほかの脳の領野にはどのように影響しているのか、あまり明らかでなかったためストレスと高度な意思決定の関係についていくつかの実験を行いました。
ストレス状況下では、人間はネガティブな心理になり、否定的な、マイナスの方向に目が行きがちになるのではないかと考えられてきた常識とは異なり、実験の結果は、正反対であることがわかりました。ストレスにさらされた状況で、複雑な、さまざまな側面を比較衡量して判断をなさなければならない時に、人は長所や美点にばかり注目してしまい、欠点にはあまり注意を向けずに、判断するようになる傾向が高いことがわかりました。
例えばストレス下で新たな職を探す場合に、給与の高さばかり重視してしまい、通勤時間の長さや職場環境の劣悪さを軽視してしまうなどの傾向が出るということだそうです。またストレス状況下での反応には男女差があり、男性は、より高リスクの判断をするようになり、女性は低リスクの判断をする傾向があることもわかりました。
博士はこうした結果から、ストレス下でアルコールや薬物、ギャンブルなど嗜癖性の高い行為に奔るのは、負の側面に注意が向かず、その場の衝動を満たす快感ばかりに目が行くこうした判断の傾向による部分もあることが明らかになったとしています。