コラムColumn

詐欺や不正行為をさせる2つのホルモン

心理

Posted on 2015.8.8

phm11_0256-s日本では「振り込め詐欺」などの特殊詐欺の被害総額が、2014年1年間で559億円にのぼり、過去最悪の被害総額になりました。
アメリカでも年間の詐欺被害額は 3.7兆ドルという莫大な金額。
なぜこのように詐欺事件が永続的に発生するかのついて、内分泌学的なアプローチで研究されたことがありませんでした。
そこ でテキサス大学とハーバード大学が、人が詐欺のような非倫理的な不正行為を行う背景には、ホルモン分泌が関係しているのではないかという仮説を立 て、研究を進めました。特にこの研究では、性ホルモンのテストステロンと、ストレスホルモンのコルチゾールが関係している可能性があることをつきとめ、2015年7月号の科 学雑誌『Journal of Experimental Psychology』にその結果を発表しました。
研究では、被験者117人に数学のテストを受けてもらい、その点数について自己申告して、できた点数によって 報奨金がもらえるようにしました。被験者からは、数学テストを受ける前後に唾液のサンプルを採取しました。その結果、試験前後でテストステロンとコルチゾー ルの数値が上昇した人が、「実際に正解した数よりも多く正解できた」と過大申告して、報奨金をたくさんもらっていたことが明らかになりました。
さ らに詳しく結果を分析した結果について研究者は、テストステロンが人をだましたり非倫理的な行動をとることへの「罪悪感や恐怖心を低下」させ、コルチゾールは ストレスを受けたときに増加するホルモンなので、不快なストレスを取り除くために、試験中にカンニングをしたり、不正な報告をしてお金をたくさんもらうことで、ストレスから回避 されようと企てることを正当化させ、この2つのホルモン分泌の増加が、人を不正行為に走らせる内分泌的な要因になっているのではないかと分析します。さらにその証拠として、不正な報告をして報奨金をもらった人は、その後のコルチ ゾールのレベルが低下して、ストレスから解放された状態になっていたそうです。
Hormones and Ethics: Understanding the Biological Basis of Unethical Conduct.. Journal of Experimental Psychology: General, 2015