あなたが笑うと世界も笑う…たとえ作り笑いでも自分とまわりの人に肯定的な感情を生み出し、うつ病予防やメンタルヘルス向上に貢献する可能性があることが南オーストラリア大学の研究で明らかになり、2020年８月の『Experimental Psychology』で発表されました。この研究では実験参加者の口にペンを挟んで顔の筋肉を動かし、人工的に笑顔を作り出してもらいました。さらにそのまま作り笑いをして歩いてもらい、同じ人が眉をひそめて暗い表情で歩く様子と比較して他者評価してもらいました。その結果、口にペンを挟んで作り笑いをした表情は、それを見た他者にもポジティブな感情を抱かせることができ、ウォーキング中の様子も「楽しそう」に見せることができました。さらに大きく笑う練習をすると、感情の中枢である扁桃体を刺激して、感情的にポジティブな状態を促進することがわかりました。この結果について研究者は、顔の筋肉活動が顔の表情だけでなく、体が示す表現にも影響を与え、他者だけでなく自分自身もポジティブな意識を維持することができる可能性があることを指摘し、筋肉を動かした刺激で脳をだまし、「幸せだ！」と知覚させて、うつ的な気分や不安を緩和させることでメンタルヘルスの向上に貢献することに期待しています。コロナ禍でマスク着用中の場合、口の筋肉を動かしてもマスクが隠してしまうため、他者には笑顔が伝わりにくいかもしれませんね。逆に考えると、マスクで覆われている分、大きな作り笑いをしていても、気づかれにくいので、気が滅入った時などは、マスクの下で大げさな作り笑いをすると気分が上がるかもしれませんね。

【出典】Fernando Marmolejo-Ramos, Aiko Murata, Kyoshiro Sasaki, Yuki Yamada, Ayumi Ikeda, José A. Hinojosa, Katsumi Watanabe, Michal Parzuchowski, Carlos Tirado, Raydonal Ospina. Your Face and Moves Seem Happier When I Smile. Experimental Psychology, 2020; 67 (1): 14 DOI: 10.1027/1618-3169/a000470