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経済的不安は数十年後に痛みを引き起こす

心理病気老化脳

Posted on 2021.11.9

中年期の経済的なストレスは、数十年後の高齢期の肉体的苦痛につながる可能性があることが米国ジョージア大学の研究で明らかになり、2021年3月の「Stress and Health」で発表されました。この研究は1991年~2017年の27年間、アイオワ州で農業に従事する508人の夫婦(1991年時点で平均年齢42歳、2017年時点で平均年齢67歳、婚姻期間は45年)を長期的に調査をした結果をもとに分析したもの。この研究は、 1980年代後半に発生した農業危機に関連した経済的問題を経験し、長期間の結婚生活のストレスと健康状態について分析するために行われました。研究者たちは、同時に起こる身体の病気、家族の収入、年齢を考慮した後でも、1990年代初頭の経済的困難と30年近く後の身体の痛みとの間に関連性があることを発見しました。この結果について研究者は、肉体的苦痛は生物心理社会的現象であり、経済的負担のようなストレスの多い経験が、コントロールの感覚のような心理的資源を侵食し、痛みや不安などをコントロールする力を低下させてしまうことで、ストレスに敏感な脳領域を活性化させてしまい、痛みやストレスに敏感に反応するようになってしまうのではないかと推察しています。さらに米国では、成人のほぼ3分の2が何らかの身体の痛みを訴え、その多くが同時に孤独も訴えています。この割合は上昇しており、そのための医療費も上昇していることから公衆衛生上の懸念事項となっていることを指摘しました。

【出典】Kandauda A. S. Wickrama, Eric T. Klopack, Catherine Walker O'Neal. Midlife family financial strain, sense of control and pain in later years: An investigation of rural husbands and wives. Stress and Health, 2021; DOI: 10.1002/smi.3038