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住む人と部屋の個性が一致すると幸福度が高まる

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Posted on 2022.9.20

住む人と部屋の個性が一致すると幸福度が高まることが、米国テキサス大学の研究で明らかになり、2021年7月の科学雑誌「Gerontologist」に発表されました。

この研究では65歳以上の286人を対象に研究を実施しました。 参加者の性格を分析するために最も多く過ごしている部屋の写真を撮り、その写真から、明るさ、清潔さ、新しさなど、部屋の特徴を評価しました。さらに参加者の性格、認知機能、運動能力なども調べ、部屋の写真の特徴と比べました。

その結果、 外向的な性格と部屋のアイテムの新しさ・装飾の陽気さが関連していることがわかりました。これに関しては、訪問する友人や家族にとって魅力的な部屋にしたいという願望から来ているのかもしれない、と研究者らは評価しています。さらに 一人暮らしの高齢者の装飾には開放性が見られ、他の人と一緒に暮らす人々は、部屋の装飾で自分の個性を表現する余裕がない可能性があることを示唆しました。また、歩いたり階段を上ったりできないなどの運動機能上の制限に直面すると、家は古くなり、不快になり、薄暗くなり、雑然とすることがわかり、運動機能の低下によって、部屋をきれいに維持するためのエネルギーが少なくなってしまうことが関係していると推察しています。 運動機能に制限がある人は、部屋が散らかっていることが多い一方で、この場合、部屋の散らかり具合がうつ病の症状と相関していないこともわかりました。これは単に「必需品を手元に置いておきたい」ということからくる散らかりであり、うつ的傾向による意欲の低下ではないということです。

研究結果として、住む人の性格や好みと居住空間が一致しているほど、幸福度が高まることがわかりました。Home is where the heart is (家は愛を感じるところ)…という英語のことわざがありますが、愛や幸せを感じる住空間は十人十色で、整理整頓された空間、雑然とした空間など、個人の好みに合う家に住むことが、最大の幸福を引き出すようです。

【出典】 Karen L Fingerman, Yijung K Kim, Shiyang Zhang, Yee To Ng, Kira S Birditt. Late Life in the Living Room: Room Décor, Functional Limitations, and Personality. The Gerontologist, 2021; DOI: 10.1093/geront/gnab093