コラムColumn
香りはうつ病を回復させる
心理美容脳
Posted on 2024.4.14
馴染みのある香りを嗅ぐと、うつ病の人が特定の自伝的記憶を思い出すのに役立ち、うつ病の回復を助ける可能性があることが、米国ピッツバーグ大学の研究で明らかになり、2024年2月の「JAMA Network Open」に研究成果が掲載されました。この研究によって、香りは特定の出来事の記憶を呼び起こすのに言葉よりも効果的であり、うつ病の人がネガティブな思考サイクルから抜け出して思考パターンを再編成し、より早くよりスムーズなうつ病の治癒に役立つため、臨床現場でも使用できる可能性があることを示しています。
研究では、オレンジや挽いたコーヒー、靴磨き、ヴィックス ヴェポラッブなど、香りの強い強力な「おなじみの香り」が入ったガラス瓶を研究参加者に提示し、その中の臭いを嗅いでもらった後、良いことも悪いことも関係なく、特定の記憶を思い出すように求めました。その結果、コーヒーの臭いを嗅いでもらうと、一般的な記憶(以前にコーヒーショップに行ったことがある)よりも、特定の出来事の記憶(たとえば、先週の金曜日にコーヒーショップに行った)をより鮮明に思い出すことが判明しました。つまり匂いによって引き起こされた記憶は言葉によって引き出された記憶より鮮明になり、より臨場感と現実感が増していることが。脳スキャナー検査で判りました。
さらに研究者は、参加者にポジティブな記憶を具体的に思い出すように指示しなかったにもかかわらず、結果的には香りによる刺激によって、参加者はポジティブな出来事を思い出す可能性が高いことが判りました。
これらの研究結果から、香りの刺激がうつ病を改善させる可能性が高いこと、うつ病治療への応用について指摘しています。
【出典】 Emily K. Leiker, Emma Riley, Scott Barb, Sair K. Lazzaro, Laurie Compère, Carolyn Webb, Gia Canovali, Kymberly D. Young. Recall of Autobiographical Memories Following Odor vs Verbal Cues Among Adults With Major Depressive Disorder. JAMA Network Open, 2024; 7 (2): e2355958 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.55958