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マラソン参加前の鎮痛薬服用には副作用の危険!
運動
Posted on 2013.5.9
東京マラソンや青梅マラソン、ホノルルマラソン、各地で観光資源ともなりうることから参加型マラソンの開催数も増加の一途です。
かつては特別な能力を持つアスリートにのみ許される競技と考えられていたマラソンも、今では気軽に参加できる身近なスポーツとなりましたが、ドイツ・フリードリヒ・アレクサンダー大学などの研究チームが、BMJ・OPEN2013年4月19日付けに発表した研究で、マラソン参加前に鎮痛剤を服用すると、予想外の深刻な副作用が現れる可能性があることが明らかになりました。
研究チームは2010年に開催されたボン・マラソン参加者に質問表を配布し、競技後3.913人の参加者から回答を得て、その内容を詳しく分析しました。
レース参加前に鎮痛薬を服用していた参加者の20%は、参加前のトレーニング期間にも何らかの痛みを緩和するために鎮痛薬を服用しており、10%がレース前にどこかに痛みを抱えていました。
一方鎮痛薬を服用していない参加者で、痛みを抱えていた人はわずかに1%に過ぎませんでした。
鎮痛薬を服用していた参加者の54%が医師の処方せんではなく、個人的にジクロフェナク(ボルタレン)、アスピリン、イブプロフェンなどの市販薬を購入し服用していました。
体調不良による途中棄権率は、鎮痛薬服用者もそうでない参加者も、変わりませんでしたが、筋肉痛による棄権は、服用者よりも非服用者のほうが有意に高いこともわかりました。
しかしながら胃腸の不良での棄権率は鎮痛薬服用者が有意に高く、また胃けいれん、心血管障害、消化管出血、血尿、関節・筋肉痛などの症状での棄権率は、鎮痛薬服用者が5倍も高く、服薬量に比例してリスクが高まっていることも分かりました。
研究チームは、鎮痛薬は痛みに関わる物質であるプロスタグランジンの産生を制御する酵素を阻害することで機能していますが、プロスタグランジンはマラソンなど肉体が極度なストレスにさらされた時に、組織を保護する機能も果していることから、このような結果につながっていると考えられるので、今後も研究を進めて、マラソン参加前に服用してもよいかどうかを明確にしたいとしています。
BMJ・OPEN2013年4月19日