コラムColumn
筋肉がうつを改善する
運動
Posted on 2014.11.16
筋トレしている人って、前向きで元気、アグレッシブな人が多く、不安やストレス、うつなどとは縁がないような感じですよね? 実は筋肉を鍛えることで、ストレスに強くなり、うつ病になりにくくするメカニズムが科学的に解明されつつあるのです。
実 はうつ病の人の体には「キヌレニン」という物質が、普通の人よりも多いことが明らかになっています。肉、魚、乳製品、豆類などのタンパク質に含まれるトリ プトファンを代謝するときに作られる物質には不安を取り除き、気分を落ち着かせて、攻撃性やうつ的な気分を軽減させる「セロトニン」という物質が「幸せホ ルモン」として有名です。そしてもうひとつ、実はトリプトファンの代謝に伴って作られる「キヌレニン」という物質があり、この物質がうつ病や統合失調症、 チックなどの患者の体内で多く生成されていることが明らかになっています。
つまり何らかの原因で、肉や魚を食べて、トリプトファンを取り込んでも、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが作られずに、キヌレニンをたくさん作ってしまうことで、精神疾患を起こしている可能性があるのです。
ス ウェーデン・カロリンスカ研究所によると、運動によって骨格筋が鍛えられると増加する「PGC-1alpha1」というタンパク質が、キヌレニンを分解す る酵素「キヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)」の体内濃度を上昇させることで、キヌレニンの働きを抑制し、うつを予防し、ストレス耐性を高める 可能性があることがわかり、2014年9月の『Cell』で発表しました。
これはマウスを使った研究によるもので、骨格筋の「PGC- 1alpha1」タンパク質が多いマウスと普通のマウスに、騒音、チカチカする光、概日リズムの不規則な逆転などのストレスを与えて、5週間後のようすを 比較したところ、「PGC-1alpha1」タンパク質が多いマウスだけはうつ症状を起こしていませんでした。さらに「PGC-1alpha1」タンパク 質が多いマウスには、キヌレニンを分解する物質「KAT酵素」が多いことも明らかになりました。
Skeletal Muscle PGC-1a1 Modulates Kynurenine Metabolism and Mediates Resilience to Stress-Induced Depression. Cell, September 2014