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【メディカル】脳の打撲を繰り返すとパンチドランカーになる!? 米・高校生フットボール選手の検査結果より。
脳運動
Posted on 2010.10.21
パンチドランカーという言葉を聞いたことがありますか? ボクシングなどの格闘技で何度も頭にパンチを受けているうちに脳に異常を来たして日常生活に支障が生じる症状です。
アメリカの高校ではフットボールが大人気で、花形スポーツ。有名大学への推薦入学など、優秀なフットボール選手は、社会的に優遇されることも多々あります。 しかしながら、ヘルメットを被っていても、避けられないぶつかり合いなどで、脳震盪(のうしんとう)を起こす高校生の選手も少なくありません。
米国インディアナ州のPurdue大学のThomas Talavage博士らがオンライン版のJournal of Neurotraumaに発表した内容によると、脳震盪を起こしていなくても、パンチドランカーのように脳神経の損傷を起こして、慢性的な脳の障害につな がる可能性がある高校生のフットボール選手がいることが指摘されました。
博士らは、21人の高校生フットボール選手の脳神経認知機能テスト とfMRI検査を実施し、そのうち11人をピックアップ。11人は脳震盪を起こした経験があり、通常ではありえないほどたくさん頭部打撲をしていることが 判明したため、フットボールのシーズン前後に継続して検査を行いました。11人のうち3人が脳震盪を起こしており、重大な脳神経の認知機能の低下が見られ ました。またfMRIでは上・中側頭回という部分に損傷があることが判明。脳震盪を起こしていない残りの8人のうち、4人にはfMRIに異常がなく、ほか の4人はfMRIの画像で、前頭前野背外側部と上側頭回というワーキングメモリー(作業記憶・短期記憶)を司る部分に損傷が見られました。脳震盪を起こし ていないにもかかわらず、fMRIで異常が発見された選手たちの、シーズン中のフットボールの試合や練習風景を分析してみると、ほかの選手よりも数多く、 頭の前方上部(前頭前野背外側部に近い部分)を打撲していることが明らかになりました。
これは慢性外傷性脳損傷(俗に言うパンチドランカー のような症状)を将来引き起こす可能性が高いため、それを防ぐためにも脳震盪以外の脳を損傷する可能性があるけがやプレーがどんな状態なのかをしっかり研 究し、それを予測して防ぐようにしなければならないと指摘しています。