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【ライフスタイル】慢性的にアルコールを飲んでいると脳内の連携が悪くなる
脳食
Posted on 2011.11.23
慢性的なアルコール中毒は前頭葉と小脳の連携システムを劣化させてしまう恐れがあることが、アメリカテネシー州ナッシュビルの Vanderbilt大学に所属するBaxter P. Rogers博士らの研究で明らかになり、詳細が2012年2月のAlcoholism: Clinical Experimental Researchに掲載される予定です。
アルコールが認知神経科学的に広範囲にわたってダメージを与えることはわかっていますが、そのメカ ニズムについてはすべてが解明されているわけではありませんでした。しかし解剖などの研究によって、小脳は、アルコール依存や栄養不良によってもっとも損 傷を受けやすい脳の部位であることがわかっています。また脳のMRI画像を分析した研究で、慢性的なアルコール依存が、小脳にダメージを与え、前頭葉にも 異常を来してしまうことも明らかになっています。
研究者らは、右利きの慢性的なアルコール依存患者10人と、健康な右利きの人10人を比較 する実験を行いました。アルコール依存患者は5~7日間禁酒をして、アルコールの禁断症状が治まってから実験を行いました。実験は利き腕でない左手の指を 指示通りにたたくきながら、その時の脳の活動をfMRIで観察するというもの。特に前頭前野、側頭葉、小脳などを中心に観察しました。
その結果、前頭前野から発せられた運動の指令が、小脳に到達するための経路の結合性が、アルコール依存患者の方が健常者よりも弱まっていることがわかりました。
慢性的なアルコール依存が続くと「アルコール性小脳萎縮症」という小脳が萎縮する病気になることが知られています。小脳の萎縮によって、お酒を飲んでいない時でも千鳥足になったり、ろれつが回らなくなってしまいます。
今回の研究は、小規模なものではありますが、従来から指摘されるアルコール依存による小脳の萎縮に加えて、大脳の前頭前野と小脳の結合性も低下することで、脳の認知機能の低下がさらに進むことが指摘されました。