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【メディカル】暴力行為は脳のケガによって引き起こされることも多い!
脳
Posted on 2012.1.11
英国・オックスフォード大学のSeena Fazel博士らがPLoS Medicine 2011年12月号に発表した研究で、外傷性脳損傷がその後の暴力行為に繋がりやすいことが明らかになりました。
博 士らは、これまで暴力行為が重篤な精神疾患が暴力行為と結びついていると言われている一方で、脳神経疾患や癲癇(かんしゃく)が暴力行為に繋がっているの かどうかは明らかになっていなかったため、重度の外傷性脳損傷を受けた患者22.914人と癲癇の患者22.947人を35年間に渡って継続調査したデー タを分析しました。調査対象の外傷性脳損傷の患者が障害を受けた平均年齢は24.8歳で、対象者全体の71.1%が男性、一方癲癇患者は平均19.8歳で 癲癇と診断され52.1%が男性でした。
調査期間中に暴行・傷害罪で有罪となった外傷性脳損傷患者は2.011人で、この数字を率で換算し、通常の暴行・傷害罪のデータと比較したところ、5.8%も統計的に有意に高くなっていることがわかりました。
一 方癲癇患者が暴行・傷害罪に問われ有罪となるリスクに関しては通常よりも高くなってはいませんでした。詳しく見ると16歳以前に外傷性脳損傷を受けた患者 では、暴行・傷害罪リスクは低く、また脳水腫や出血性の損傷の場合は、局所性脳損傷を受けた場合よりもリスクが低いことがわかりました。
博士らは怪我が16歳以下の場合、なぜリスクが上昇しないのか、反復性の脳震盪などは、どのような影響を及ぼすのかなど、更に研究をする必要があるが、外傷性脳損傷患者の予後に関して暴力行為を起こしやすい傾向があることも視野に入れる必要があるだろうとしています。