コラムColumn

【メディカル】慢性的な疲労は記憶障害を起こす

Posted on 2012.3.11

stress慢性的なストレスは前頭前野におけるグルタミン酸のシグナル伝達を阻害することで、記憶障害を引き起こす可能性があることが、ニューヨーク州立大学Zhen Yan博士らの雄のラットを使った研究で明らかになり、2012年3月7日付のNeuronに報告されました。
グルタミン酸は食品に含まれるうまみ成分として有名ですが、脳内にもたくさん存在し、脳細胞の情報伝達に欠かせない神経伝達物質として、記憶、学習、認知などに関わる重要な役割を果たしています。
今回の研究では雄のラットを使い、繰り返しストレスをかけていくことで、前頭前野のグルタミン酸シグナル伝達が低減することがわかりました。このときグルタミン酸受容体のうち、GluR1が45~51%減少し、NR1サブユニットが55~63%も減少していました。これは慢性的なストレスによって、シナプス(脳の神経と神経のつなぎ目)で、ある神経から別の神経に信号を送り、情報を伝達する役割を担うグルタミン酸受容体の数が減少することで、ワーキングメモリをはじめとする記憶の情報が伝達されにくくなることで、記憶力が低下するのではないかと研究者らは指摘します。
研究者らは今後は、ストレスがなぜ前頭前野のグルタミン酸受容体の産生を抑制するのか、そのメカニズムについてさらに研究を進めることで、さまざまな精神疾患が慢性的なストレスによって発症するものであることを解明し、その治療や予防に役立てたいと述べています。