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【ライフスタイル】新奇な刺激を受ければ老齢でも脳神経は成長し続ける!
脳
Posted on 2012.6.3
これまで脳神経科学の分野においても一般的な発達心理学的な常識からも、脳神経系の発達と可塑性は若年期までのもので、人間の場合 10代までに終了し、その後成人期以降はほとんど変化せず、衰えるのみであると考えられていましたが、米国・フロリダ州パームビーチのマックス・プーランク・フロリダ研究所のMarcel Oberlaender博士らがNeuron 2012年5月24日号に発表したラットを使用した研究で、感覚器官を通した新奇な刺激を継続的に受けることで、成熟期を過ぎ加齢した後も、脳神経に新たなネットワークが生まれることが明らかになりました。
博士らは脳神経が成熟した以降も新たなネットワークを形成しうるかどうかを詳しく調べるため、1ミクロン(1000分の1ミリメートル)以下の太さでも識別できる新たな高解像度の画像処理を使用して、実験用のラットの脳神経の変化を分析しました。
実験に使用されたラットは、若いラットと老齢のラットで、ラットの感覚受容器官として一番重要なヒゲを切り揃えた場合と、そのままの場合で脳神経系にどのような影響が出るかが調べられました。
ラットにとってのヒゲは、周辺を探索し、動きまわるために最も重要な感覚器官であり、その感覚入力は視床を経由して、大脳皮質に送られます。ヒゲを切り揃えられたラットは、環境に適応するためには、それまでの感覚入力とは違った新たな感覚入力情報を処理せざるを得なくなります。もし老齢のラットの脳神経が新たに発達しないならば、そのラットは以前のようには動き回れなくなってしまいます。
博士らがヒゲを切り揃えた老齢ラットの脳を分析したところ、すぐに新たな神経ニューロンの軸索が出現し、成長しており、以前とは異なる感覚情報に対応するべく新たなネットワークが構築されていることが明らかになりました。これはこれまでの成熟期を過ぎると、脳では新たな神経ネットワークが形成されない、という常識を覆す発見でした。
博士はこの研究結果について、今回はラットの実験結果ではあるが、他の感覚入力情報や他の哺乳類、例えば同じ動物として人間にも当てはまるはずであり、こうした感覚入力情報の変化に対応して、脳は加齢しても一生新たなネットワークを形成し続けることが可能だということを示唆しているとしています。