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【ライフスタイル】高齢者がだまされやすい原因が脳科学的に解明された
脳
Posted on 2012.8.28
わが国でも振り込め詐欺や悪質な訪問販売など、高齢者が騙され被害にあうケースが増加の一途を辿っているようですが、高齢者が騙されやすいのは、米国でも同様のようで、高齢者の詐欺被害額は2011年で年間29億ドルと推定されているそうです。
こうしたことの背景には、加齢とともに脳の特定の領域が衰え、機能が変化し、疑う力が弱くなるためであることが米国・アイオワ大学の研究チームによって明らかにされました。アイオワ大学研究チームは、1982年以来脳の一部に損傷を受けた患者を500名以上ボランティアの研究被験者として登録しており、そうした被験者の中から前頭前皮質腹内側を損傷している18人と、前頭前皮質外側を損傷している21人を対象に、比較対照の健常者も合わせて実験を行いました。
実験は被験者に米国連邦取引委員会によって、消費者を騙すとして摘発された虚偽広告とほとんど同じものを見せて、その広告内容を被験者がどの程度信じるか疑うか、その広告で購買意欲が生じるかどうかを分析しました。
実験の結果、前頭前皮質腹内側を損傷している患者は、そうではない被験者の2倍も広告を信じやすく、広告内容に問題があることを指摘された後も変わりませんでした。さらに内容に問題があることを指摘されるか、されないかに関わらず、他の被験者よりも購買意欲が旺盛でした。
研究チームによれば、個人差はあるが60歳を超えると、前頭前皮質腹内側は変化、し衰えることがわかっており、今回の研究結果から、高齢者が騙されやすいことの背景にこの大脳の前頭前皮質腹内側の衰えによる疑う能力の低下が関係しているが明らかになったとしています。