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【メディカル】血糖値が高めだと脳の萎縮が進む!
脳
Posted on 2012.9.18
血糖値が高いと、脳の萎縮が進みやすい傾向があることが、オーストラリア国立大学キャンベラ校のNicolas Cherbuin博士らの研究によって明らかになり、2012年9月2日のNeurologyに発表されました。
この研究は60歳から64歳(平均年齢63歳)の266人を対象に実施され、血糖値とMRIによる脳の海馬と扁桃体の体積などを調べました。被験者の中に認知症や2型糖尿病の人は含まれておらず、平均BMIは26㎏/m2、62%が高血圧と診断されていました。血糖値(HbA1c)の平均は 4.92mmol/L でした。そして4年後に再び同じ検査を行いました。その結果を、年齢、性別、BMI、血圧、飲酒や喫煙、APOE遺伝子型などで調整した後で比較すると、グループ平均では、4年間に約1.5%の海馬と扁桃体の萎縮がみられただけだったのに対し、血糖値が4.92~5.6mmol/Lという「正常範囲でも血糖値が高めのグループ」では、4年間に6~10%の脳の扁桃体と海馬の萎縮がみられ、1年に約2%ずつの脳の萎縮があることがわかりました。
この結果について研究者らは、以前までの研究では、高血糖によってTNF-αやインターロイキン6という、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」という物質が増えることで、全身性の慢性的な炎症を引き起こし、血液凝固異常、高血圧、糖尿病、心血管障害などを起こしていることが明らかになっていましたが、高血糖によって引き起こされる脳の萎縮が、さらに脳血栓などの脳血管障害のリスクを高めている可能性が高いことを指摘しました。またさらに、血糖値が正常範囲であっても、高めの状態でいることで、脳の萎縮が進んでいることが考えられるため、正常範囲の人でも脳の健康維持のために、血糖値に注意を払うべきだと述べています。