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果糖(フルクトース)のダメージを修復するのはDHAだった!

Posted on 2016.4.23

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カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らによると、ジュースや食品の甘味料として用いられている果糖(フルクトース)が、短期記憶を司る海馬の遺伝子約200種類と、体の代謝を司る視床下部の遺伝子約700種類の遺伝子を損傷させて、記憶力や認知力を低下させている可能性があり、さらにフルクトースによって受けたダメージが、魚油、クルミ、亜麻仁油、果物、野菜に含まれ、脳のシナプスを強化して学習・記憶能力を高めるDHA(ドコサヘキサエン酸)によって改善されることが動物実験で明らかになり、2016年4月の『EBioMedicine』オンライン版で発表されました。この雑誌は、有名な科学雑誌『Cell』と『Lancet』が共同で出版しているものです。
果糖(フルクトース)は、コーンシロップ、コーンスターチから作られた安価で低カロリーの甘味料として、ジュースやお菓子などを中心に幅広く使用されていますが、一方で肥満、糖尿病、心血管疾患、注意欠陥多動障害、アルツハイマー病などを引き起こす可能性があるという研究結果も報告されています。2014年にはアメリカ人が年間約12㎏のフルクトースを消費することが報告されています。
今回の研究で、フルクトースによる脳内の遺伝子損傷が、初期の段階では「BGN」と「FMOD」という遺伝子の発現によって引き起こされ、その後、ドミノ倒しのように次々と数百の脳内遺伝子の損傷が引き起こされているということです。
さらに研究者らは、フルクトースによる脳の遺伝子損傷が、DHA(ドコサヘキサエン酸)によって食い止められることを、大量のフルクトースを投与したラットのグループ、フルクトースとDHAを投与したグループ、水だけを投与したグループの3グループで比較した実験で明らかにしました。
Qingying Meng, Zhe Ying, Emily Noble, Yuqi Zhao, Rahul Agrawal, Andrew Mikhail, Yumei Zhuang, Ethika Tyagi, Qing Zhang, Jae-Hyung Lee, Marco Morselli, Luz Orozco, Weilong Guo, Tina M. Kilts, Jun Zhu, Bin Zhang, Matteo Pellegrini, Xinshu Xiao, Marian F. Young, Fernando Gomez-Pinilla, Xia Yang. Systems Nutrigenomics Reveals Brain Gene Networks Linking Metabolic and Brain Disorders. EBioMedicine, 2016