コラムColumn
歯磨きはアルツハイマー病予防に重要
脳
Posted on 2019.6.10
歯周病はアルツハイマー病のリスクを高めることが明らかになりました。これは、ノルウェーのベルゲン大学の研究成果によるもので、2019年1月の「Science Advances」に掲載されました。歯周病の主要な病原体である「Porphyromonas gingivalis」が、アルツハイマー病患者の脳内で確認されました。これについて研究者は、歯周病を引き起こす菌が口から脳へ移動して有害な酵素を排出し、それが脳内の神経細胞を破壊している可能性を指摘しています。さらに歯周病菌が作り出す有毒な酵素「gingipains」もアルツハイマー病患者の脳から検出されました。さらに歯周病菌に感染したマウスを調べた結果、口腔内のみならず脳内でも歯周病菌が定着して、アミロイド斑の成分であるAβ1-42の産生を増加させることがわかりました。また研究者らは53人のアルツハイマー病患者を調べたところ、96%で歯周病菌が作り出す有毒な酵素「gingipains」を発見したそうです。歯周病菌による神経毒性を遮断するために、研究者らは「gingipains」をターゲットとする分子標的治療薬を設計し合成しました。これを用いることで、脳への歯周病菌の感染が減り、Aβ1-42の産生もブロックされ、神経炎症を減らし、海馬のニューロンの劣化を防いだことから、「gingipains」阻害薬が、将来的にはアルツハイマー病の治療に役立つ可能性があると研究者らは指摘しています。しかし結論として研究者らは、歯ブラシで歯を磨き、デンタルフロスで歯間の汚れを落とすなど、歯を清潔に保つことこそが、今できるとても有効なアルツハイマー病予防であると述べています。
Science Advances 23 Jan 2019: Vol. 5, no. 1, eaau3333 DOI: 10.1126/sciadv.aau3333